NHK受信料を払わないとどうなるの?途中から契約して今から支払う
NHK受信料を払わないとどうなるの?
NHKの放送受信契約をした後に、料金を支払わなかった場合は、最終的に裁判になり給与や預金の差し押さえが行われます。
全世帯の約8割が受信料を支払っていて、未払いや未契約の人に対する裁判も行われています。裁判になれば現時点ではNHK側の主張が通ることが多いです。
払わずに無視した場合も実質的に滞納していることになるので、後でまとめて支払うことになるかもしれません。
2023年4月からは未契約者に対する割増金制度が始まりました。「テレビを設置した月の翌々月の末日まで」に契約しないと、通常料金の「2倍」の割増金が請求されます。(通常の受信料と合わせて3倍)
2023年11月から、NHKは契約しない世帯に対して、割増金などの支払いを求める民事訴訟を起こしています。
※NHK受信料を払わなくても罰則はないので、刑事罰を受けることはありません。契約者の未払いに対する延滞利息はありますが、NHKが延滞利息を請求したことはありません。
NHKと契約していなければ受信料の支払い義務はない?
法律的には契約が成立していなければ受信料の支払い義務は発生しないので、訴訟を起こされない限りは支払いを免れます。しかし、訴訟で敗訴すればテレビを設置したときまで遡って受信料を支払うことになります。訴訟になれば敗訴する可能性が高いです。
受信料の支払いは昔から問題になっています。契約を強要することは民法違反なのだから、契約しなければ受信料を支払う必要はないと言われていたときもありましたが、現在は支払ったほうがよいという論調が強くなっています。
NHKと途中から契約して今から支払う場合、経験者の口コミなどを見ると、NHKと契約した日の翌月から受信料の支払いを開始する人が多いようです。
放送法第64条第1項により、NHKとの契約は義務ですが、受信料の支払いは義務ではないので、NHKと契約した上で受信料は支払わない人もいます。
受信料を支払っていない人は20%ほどいるので、支払うのが嫌な人は自分で色々と調べてみるのがよいと思います。
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NHK受信料を払わないとどうなるのか
受信料を支払わずに放置したらどうなるかが気になっている人も多いと思います。NHK公式サイトに支払いに関するFAQが載っています。
ずっと支払わないとどうなるのか
- 「支払わなくても大丈夫」「溜まってしまい支払いたくない」「見ていないのに支払う必要がない」、そうした方に受信料制度をご理解いただき、お支払いしていただくための活動を進めています。
- それでもなお、ご理解が得られない場合、やむを得ず、裁判所を通じた法的手続きを実施しています。
何度か支払いのお願いをして、それでも支払いに応じてもらえない場合は、法的手段を取ることが書かれています。
裁判所を通じた法的手続きというのは、支払督促や民事訴訟のことです。これについてもFAQがあります。
「支払督促」「民事訴訟」とはどのようなものか(法的根拠は何か)
- 支払督促
「支払督促」とは、簡易裁判所への申立てにより、簡易裁判所の書記官から送られる支払いの督促であり、受信契約を結ばれているが受信料未払いの方が対象となります。「支払督促」は、民事訴訟法382条に根拠をおきます。督促を受けた方から異議申立てがなければ、差押えなどの強制執行も可能となりますが、異議申立てがある場合は、通常の訴訟に移行することになります。
NHKとしては、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、お支払いをお願いする努力を重ねた上で、それでもなおお支払いいただけない場合の最後の方法として、民事手続きによる支払督促の申立てを実施しています。- 民事訴訟
「民事訴訟」は、テレビ等の受信機を設置しているにもかかわらず、受信契約を結んでいただけない世帯や事業所が対象となります。 未契約の世帯や事業所に対しても、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、ご契約とお支払いをお願いしていきますが、こうした努力を重ねてもなお、ご契約いただけない場合の最後の方法として、受信契約の締結や受信料の支払いを求める民事訴訟を実施しています。
受信料を支払わない状態が続いた場合は、支払督促または民事訴訟が行われます。
支払督促を受けた者は異議申し立てすることができます。異議申し立てした場合は、通常の民事訴訟に移行します。異議申し立てしなかった場合は、強制執行(差し押さえ)されます。
カードローンやクレジットカードの滞納などでは、支払督促したところで債務者から異議申し立てされるので、始めから訴訟を起こすケースも多いです。NHKの法的手続きがどのような手順で行われるのかはわかりません。
強制執行するためには、債務名義(強制執行するための書類)が必要になります。
支払督促に対して受領日から2週間以内に異議申し立てしないと、NHK側が仮執行宣言の申立てを行い、最終的に仮執行宣言付支払督促正本が債務名義となり、強制執行されます。
民事訴訟で和解が成立したり、敗訴した場合に支払わないときも和解調書や判決が債務名義となり、強制執行されます。
契約しない世帯に対する訴訟
2023年4月に未契約者に対する割増金制度が始まりましたが、NHKは受信契約を結ばない世帯に対して、割増金の支払いを求める訴訟を起こしています。
HKは6日、正当な理由なく受信契約を結ばない世帯などに2倍の追加支払いを求める「割増金制度」に基づき、東京都内の3世帯に対し、受信契約の締結と割増金などの支払いを求める民事訴訟を東京簡易裁判所に提訴したと発表した。
割増金制度は、今年度から導入され、実際に支払いを求めるのは今回が初めて。これまで文書の送付などを重ね、契約を促してきたが、応じてもらえなかったという。
NHKは「個別事情を総合勘案したうえで、やむなく割増金の請求を含めた提訴に至った。今後も公平負担の実現に向けた取り組みを進めていく」とコメントしている。
受信契約の申込期限は、「テレビを設置した月の翌々月の末日まで」です。
これまでに再三に渡り契約を促していた世帯に対する訴訟だと思いますが、割増金制度が始まってから半年で提訴したのは驚きです。
割増金により通常料金の3倍の金額を請求されることになります。全ての未契約者に対して訴訟するとは思いませんが、訴訟になれば敗訴する可能性が高いでしょう。
受信契約者の未払いに対する延滞利息
NHKの受信契約をしている人が受信料を支払わない場合は、延滞利息が発生します。
延滞については、NHK放送受信規約に書かれています。
支払いの延滞
第12条の2 NHKは、放送受信契約者が放送受信料の支払いを3期分以上延滞したときは、当該放送受信契約者に対し、延滞した放送受信料に加え、1期あたり2.0%の割合で計算した延滞利息を請求することができる。
NHKの受信料の支払いは1期2ヶ月となっていて、3期分(6ヶ月)以上延滞したときに、1期あたり2.0%の延滞利息が発生することになります。
2ヶ月で2%なので、年率換算だと12%です。銀行カードローンの利息と同じくらいないので、かなりの金利だと思います。
※令和2年4月から令和5年9月の間は、延滞利息が発生しません。
NHKが延滞利息を請求したことはない
延滞利息に関する規約はありますが、実際にNHKが延滞利息を請求したことはありません。
この点も受信料の闇というか、払わないほうが得と考える一因になっています。
令和3年の第207回臨時国会で、NHKの延滞利息に関する質問主意書が出されました。
質問書では、「NHKの請求書には延滞利息が含まれていない。延滞利息を請求しないことで、受信契約者は延滞利息を支払う必要がないと誤認してしまう。NHKが延滞利息を請求しないのは、妥当なのか政府に見解を聞きたい」というものです。
答弁書では、「延滞利息の取り扱いについては、NHKが判断するべきもの」と回答しています。政府としては、特に意見は言わないということですね。
現時点では、NHK受信料を延滞しても延滞利息を請求されることはないので、心配することもないでしょう。
NHK受信料に関するFAQ
Q.途中から契約したらどうなる?
TVを設置してから年数が経過している場合、過去の受信料も合わせて請求される可能性があります。
しかし、経験者の口コミなどを見ると、NHKと契約した日の翌月から受信料の支払いを開始している人が多いです。
いつから受信機器を設置したのかはNHK側にはわかりませんし、NHKも契約しようとする人にそこまで厳しくないので、初めてTVを設置したことにしてその月から契約する人が多いようです。
※受信料の消滅時効は5年ですが、未契約の人は消滅時効が成立しないので、5年を超える期間の請求が来る可能性もあります。
Q.過去分を今から払うことはできる?
過去に遡って受信料を支払うことはできます。支払いたい人は5年分でも10年分でも支払えます。
NHKと契約した状態で未払いの人は、消滅時効があるので最長でも5年分の料金に抑えられます。
受信料の消滅時効は5年ですが、消滅時効は援用しないと成立しません。時効の援用とは、相手に消滅時効を向かえていることを内容証明郵便などで伝えることです。
5年以上支払っていない人は、時効について申し出ると過去5年分の料金を請求されるはずです。
NHKと契約していない人は、消滅時効が成立しないため、TVを設置してから支払っていない全期間の料金を請求される可能性があります。
未契約だった場合、多くの人がNHKと契約したときから支払いを開始していますが、割増金制度が始まったことで、過去の未払い分の徴収も厳しくなるのかもしれません。
Q.受信料を払っていない割合は?
2021年度末のデータでは、受信契約対象世帯数4,666万件のうち契約世帯数は3,796万件で、契約率は81%です。
一般家庭の5軒に1軒は受信料を支払っていません。2015年度のデータでは、契約率は77%だったので、以前よりは上がっています。
Q.受信料を払っていない人はずるくない?
受信料を支払っている人からすると、払っていない人はずるいと感じるかもしれませんが、受信料の支払いは義務ではないので、支払いたくない人は支払わないという選択もできます。
全体の20%も払っていない世帯があるので、払わないこと自体は珍しくありません。若い人や一人世帯の人は払っていない場合も多いです。
割増金制度がスタートし、未払い者は通常料金の3倍の支払いを請求される可能性はありますが、受信料を支払いたくない人はNHKと争う覚悟で望みましょう。
Q.NHKとの契約は義務なの?
放送法第64条に「NHKの放送を受信することができるテレビをお持ちの場合、NHKと受信契約をしなければならない」と規定されています。
これだけでは受信料の支払いに関する明確な規定はないことになりますが、日本放送協会放送受信規約第5条で「放送受信料を支払わなければならない」と決められています。
放送法と日本放送協会放送受信規約の2つを持って、TV等を設置した者は受信料の支払義務があると定義され、裁判でも認められています。
しかし、放送法で受信料の支払義務があると決められているわけではないので、NHKと契約した上で受信料は不払いとする人もいます。
NHK公式サイトにも「よくある質問集」があるので、気になる人は公式サイトをご覧ください。
放送法や受信契約、受信料、割引制度、免除、転居、解約などについて詳しく書かれています。
NHK受信料はみんな払ってるの?
NHK受信料はどれくらいの人が払っているのですか?
NHK受信料を支払っている世帯は約8割です。2割の世帯は支払っていないことになります。
NHKの契約世帯数は国勢調査など公的調査をもとに算出した推計データで確認できます。(受信料・受信契約数に関するデータ)
契約世帯=個人 契約事業者=企業
受信料を支払わない世帯の割合
区分 | 件数 | 契約率 |
---|---|---|
受信契約対象世帯数 | 4,666万件 | – |
世帯契約数 | 3,796万件 | 81% |
世帯支払数 | 3,682万件 | 79% |
日本の総世帯数が5,725万件で、そのうちNHK受信料の免除対象世帯が648万件なので、受信契約の対象になる世帯数は4,666万件です。
4,666万件のうち契約している世帯が3,796万件なので、契約率は81%です。一般家庭の5軒に1軒がNHK料金を払っていない世帯ということになります。
契約世帯3,796万件のうち支払世帯3,682万件なので、契約世帯の97%は料金を支払っていることになります。契約したのに未払いの世帯は3%です。
受信料を支払わない事業所の割合
区分 | 件数 | 契約率 |
---|---|---|
受信契約対象数 | 406万件 | – |
契約事業所数 | 359万件 | 88% |
支払事業所数 | 357万件 | 87% |
企業などの事業者は、総事業所数が533万件で、免除事業所数が127万件なので、受信契約対象数は406万件です。
406万件のうち契約している事業所が359万件なので、契約率は88%です。企業の10件に1件が未契約ということになります。
契約数359万件中、支払数が356万件なので、契約事業所の99.4%は料金を支払っていることになります。
NHK受信料を払わない方法
NHK受信料を払わないですむ方法はありますか?
NHKを見ていなければ受信料を払わなくてもよいというわけではなく、NHKが受信できる機械を設置した時点で受信料を支払わなければなりません。
受信料を支払わなくてよいのは以下の場合です。
- 受信料を払う必要なし
-
- TVなどの受信機器がない
- 受信機器があってもNHKが受信できない
- 放送受信料免除基準に該当する
NHKを受信できない状態であれば受信料を払う必要はありません。以前は受信できる状態で契約していたが、今は受信できなくなった場合は、解約手続きが必要になります。
また、特定の条件を満たすとNHK受信料は、全額免除または半額免除されます。低所得者世帯や障害者を抱える世帯などが免除の対象になります。
生活が苦しいので受信料を免除してもらいたい
「放送受信料免除基準」では、生活保護を受けている世帯や、世帯構成員の全員が市町村民税非課税で構成員のどなたかが障害者手帳など(身体障害者手帳、療育手帳(または判定書)、精神障害者保健福祉手帳)をお持ちの世帯は、全額免除になることなどが定められています。
全額免除、半額免除の詳細については以下のようになります。
NHK受信料の免除
受信料の免除を受けられるのは、免除申請書を提出してNHKが受理した月からなので、対象者の方はすぐに申請してください。
全額免除
対象者 | 要件 | |
---|---|---|
公的扶助受給者 | 生活保護受給者など | |
住民税非課税の身体障害者 | 身体障害者手帳をお持ちの方がいる世帯で、住民税非課税世帯。 | |
住民税非課税の知的障害者 | 所得税法または地方税法に規定する障害者のうち、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医により知的障害者と判定された方がいる世帯で、住民税非課税世帯。 | |
住民税非課税の精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方がいる世帯で、住民税非課税世帯。 | |
社会福祉施設等入所者 | 社会福祉法に規定する社会福祉事業を行う施設または事業所に入所されている場合 | |
奨学金受給対象等の別住居の学生 |
親元などから離れて暮らし、以下のいずれかにあてはまる学生
|
半額免除
対象者 | 要件 | |
---|---|---|
視覚・聴覚障害者 | 視覚障害または聴覚障害により、身体障害者手帳をお持ちの方が世帯主で受信契約者の場合 | |
重度の身体障害者 | 身体障害者手帳をお持ちで、障害等級が重度(1級または2級)の方が世帯主で受信契約者の場合 | |
重度の知的障害者 | 所得税法または地方税法に規定する特別障害者のうち、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医により重度の知的障害者と判定された方が世帯主で受信契約者の場合 | |
重度の精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳をお持ちで、障害等級が重度(1級)の方が世帯主で受信契約者の場合 | |
重度の戦傷病者 | 戦傷病者手帳をお持ちで、障害程度が特別項症から第1款症の方が世帯主で受信契約者の場合 |
受信料の半額免除は、対象者が世帯主かつNHKの契約者でないといけないので、家族が重度の障害者でもその人が世帯主でないと対象になりません。
NHK受信料を滞納したときの差し押さえ
NHKと放送受信契約を結ぶと受信料の支払い義務が発生する可能性があります。料金を支払わなければ最終的に預金や給与の差し押さえが行われることになります。
契約をしていなければ支払い義務は発生していないので、差し押さえが行われることはありませんが、裁判によって強制的に契約させられることもあります。
いずれにしてもNHK受信料を支払わないと後々面倒なことになる可能性が高いです。NHKと契約している人は延滞することなく支払った方がよいでしょう。
滞納から差し押さえまでの流れ
NHKの料金を数ヶ月滞納する
裁判所から支払督促が届く
異議申立書を返送する
裁判所から訴状が届く
答弁書を返送する
裁判所で今後の支払いについて話し合う
和解が成立したら和解の内容に沿って支払う
和解が成立しない場合は裁判が行われる
NHK料金を支払わないとNHKから督促状が届きますが、それでも支払わないと裁判所から支払督促が届きます。
裁判所から届く支払督促は、異議申し立てをしないと仮執行宣言申立てをして強制執行(差し押さえ)が可能になるため、強制執行されたくない人は書類を無視せずに異議申立書を返送しましょう。
異議申し立てすると裁判に移行します。まずは裁判所で当事者同士で話し合いが持たれ、双方が合意すれば和解が成立します。裁判の多くは和解によって解決しています。
和解に応じた場合は和解の内容に沿って支払いを行います。滞納金額が大きく一括払いが難しいときは分割払いに応じてくれることもあります。
和解が成立しなかったときは裁判となり、NHK側が勝訴すれば強制執行も可能となります。裁判になっても勝ち目はないので、その前に和解に応じたり債務整理を行う人が多いです。
強制執行(差し押さえ)されるとき
受信料を支払わずに放置していると、NHK側が法的手段に出ることになり、最終的に財産の差し押さえが行われます。これを強制執行と言います。
強制執行するためには、債務名義が必要になります。債務名義とは「判決、和解調書、調停調書、仮執行宣言付支払督促等」のことです。
- 差し押さえできる条件
-
- 支払督促に対して異議申し立てをしなかった
- 仮執行宣言付支払督促に対して異議申し立てをしなかった
- 和解が成立したのに料金を支払わなかった
- 裁判に敗訴したのに料金を支払わなかった
これらの理由で債権者は債務者の財産を差し押さえることができます。差し押さえられるのは預金や給与、証券、債券、貯蓄型生命保険、車、貴金属、ブランドバッグなどですが、預金や給与が差し押さえられることが多いです。
預金と給与の差し押さえは簡単
2020年4月施行の民事執行法改正により預金や給与の差し押さえがしやすくなりました。
預金の差し押さえは、債務者が利用している金融機関名と支店名が必要ですが、支店名は金融機関本店に照会することで教えてくれます。給与の差し押さえは勤務先の特定が必要ですが、市区町村に照会することで教えてくれます。
差押対象 | 必要な情報 | 照会方法 |
---|---|---|
預金の差し押さえ | 金融機関名 | 支店名は裁判所から金融機関本店に照会 |
給与の差し押さえ | 勤務先 | 勤務先は裁判所から市区町村に照会 |
以前は支店名を特定するのが難しかったのですが、現在は裁判所が金融機関に照会することで支店名を教えてもらうことができます。
給与を差し押さえたいときの勤務先については、裁判所が市区町村に照会することで勤務先名を教えてくれます。市区町村は住民税の特別徴収を行っている関係で、住民の勤務先を把握しています。
差し押さえられる預金額
金融機関に強制執行の通知が届いた時点で口座にある預金の全てが差し押さえの対象になります。滞納額が預金額を超える場合は全額が差し押さえられます。それ以降に入金される預金は対象にはなりません。
預金が差し押さえられると、金融機関はその口座を凍結するので、1円も引き出せなくなります。クレジットカードや公共料金の引き落とし口座に利用している場合には引き落としができなくなります。
海外口座に資金を移しているような場合は別ですが、日本の金融機関なら口座を特定するのは難しくありません。何もしなければいずれ預金は全額差し押さえられます。
差し押さえられる給与額
給与の差し押さえは、勤務先に強制執行の通知が届いたとき以降に支払われる給与から天引きされます。法律で給与の全額ではなく手取りの4分の1までと決められています。
給与から所得税や住民税、社会保険料などを引いた手取りの4分の1が差し押さえられます。1回の差し押さえで滞納分に満たない場合は、次回以降の給与でも同様に手取りの4分の1まで差し押さえられます。
給与の差し押さえにより、勤務先にNHK受信料を滞納していることがバレてしまいます。それで解雇されることはありませんが、経理などの給与支払い担当者は、差し押さえできる金額を計算してそれを差し引いて給与を支払い、NHKへの支払いも行うことになるので、会社に迷惑をかけることは間違いありません。
受信料の未払いとブラックリスト
受信料を滞納するとブラックリストに載りますか?
ブラックリストとは信用情報機関の異動情報のことですが、基本的にはNHK受信料を滞納しても信用情報機関に異動情報が載ることはありません。
NHKは信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に加盟してないので、料金を滞納しても信用情報機関にデータは記録されません。
口座振替や請求書払い(コンビニ払い)で支払っている人は、数か月滞納してもブラックリストについて気にする必要はありません。
しかし、クレジットカードで受信料を支払っている人は、受信料の滞納=クレジットカードの支払いの滞納になるので、信用情報機関に異動情報が記録されます。
カードの支払いが2~3ヶ月遅れると長期延滞となり信用情報機関に記録されます。その後、債権回収会社が代位弁済したり、債務整理すれば異動情報が記録されます。
通常のローンや分割払いの契約なら、滞納すれば強制解約(契約解除)になりますが、NHKでは強制解約されることはありません。そもそも契約したくてしている人はほとんどいないので、強制解約してくれるならありがたいですよね。
放送法と民法の契約の自由
テレビなどのNHKを受信できる機器を設置したときに受信契約しなければいけないことになっていますが、これは「放送法」で定められているものです。
放送法 第六十四条
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
放送法第64条に「NHK放送を受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と明記されています。テレビやワンセグなどのNHKが受信できる機器を設置したら、放送受信契約を結び放送受信料を支払うのが基本となります。
民法では、契約の自由が保障されており、「契約を結ぶかどうか」「誰と結ぶか」「契約内容はどうするか」は契約する当事者が自由に決められることになっています。
受信機器を設置しただけで契約の義務が発生するのはおかしいのではないかと思うかもしれませんが、NHKの見解は以下のようになっています。
法律に契約の自由が保障されているけど?
放送法の規定は、自由意思で受信機を設置した人に対して、NHKの放送を含む放送を受信する意思があると認めて放送受信契約をしてもらうというものですから、契約自由の原則自体にも、何ら抵触するものではありません。
テレビを設置するかしないかは自由意志で、テレビを設置すればNHKを受信する意思があると認めたことになるから、放送受信契約をしてもらうことは、契約自由の原則に抵触していないということになります。
民法で定められている契約自由の原則に反し、NHKには契約を強制できる権限が与えられていると捉えることもできます。最高裁の判例で「放送法第64条は憲法上許容される範囲内のことで違法ではない」という判決が出ています。
日本放送協会放送受信規約
放送では、契約の義務については書かれていますが、受信料の支払義務については書かれていません。
受信料の支払い義務に関しては、「日本放送協会放送受信規約」に書かれています。
日本放送協会放送受信規約
(放送受信料支払いの義務)
第5条 放送受信契約者は、受信機の設置の月の翌月から第9条第2項の規定により解約となった月の前月まで、1の放送受信契約につき、その種別および支払区分に従い、次の表に掲げる額の放送受信料(消費税および地方消費税を含む。)を支払わなければならない。
放送法で、NHKとの契約の義務について書かれていて、日本放送協会放送受信規約で放送受信料支払いの義務について書かれています。
このことから、TV等を設置した者は受信料の支払義務があると考えられています。裁判例を見てもNHKの言い分が認められているので、受信料の支払義務はあると言えます。
最高裁の判例
NHKに関する裁判はいくつも開かれていますが、平成29年(2017年)12月6日の最高裁でNHKに有利な判決が出されました。これ以降、受信料未払いに対する世間の考え方が変わった気がします。
受信契約締結承諾等請求事件
1 放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。
2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
1つ目は、日本放送協会からの契約申込に承諾しない場合には、日本放送協会が承諾の意思表示を命ずる裁判を起こし、判決が確定したら契約が成立するという内容です。契約を拒否しても意思表示に代わる裁判によって強制的に契約できることを表しています。
2つ目は、放送法64条の強制的な契約は、憲法13条、21条、29条に違反しないという内容です。憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」、憲法21条は「表現の自由」、憲法29条は「財産権」について定められた法律です。
受信料の消滅時効
10年以上NHK受信料を支払っていませんが、請求されたら今までの分を全部支払わないといけないの?
NHK受信料は、定期払い債権なので5年で消滅時効を迎えます。NHKと契約している人は、最後の支払いから5年以上経った部分については、時効を援用することで支払い義務が消滅します。
NHK公式サイトにも受信料の消滅時効について書かれています。
Q.受信料に時効はあるのか
A.受信料の消滅時効は5年になります。
※受信料のお支払いが滞っている分については、これまでどおり全額請求させていただき、時効の申し出があった場合には、時効を5年として取り扱います。
NHK側から時効について案内があるわけではなく、申し出があった場合は5年より前の分は請求しないという形のようです。
契約前の未払い分の時効については、最高裁の判例では5年以上前の未払いについても支払い義務があるとしています。
3 日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。
受信料の支払い義務が発生するのは、判決が確定したときではなく受信機器を設置したときとしました。契約せずに受信料の支払いを拒否し、裁判の結果強制的に契約させられた場合、判決確定後からの受信料ではなく、テレビを設置してからの全期間の受信料を請求される可能性があります。
- NHK裁判のポイント
-
- 契約が成立しないと消滅時効は進まない
- 契約が成立するのは判決が確定したとき
- 受信料はテレビを設置したときからの分を全て支払わなければならない
この裁判では、NHK側は契約成立時期は申込書が到達した時点と主張していたのですが、裁判所は契約成立時期は判決が出た時点としました。
契約成立時期が判決が出た時点なら、受信料の支払いも判決が出てからの分を支払えばいいのかと思いきや、契約が成立しないと消滅時効は進まないとすることで、契約前の未払い分の支払いも必要になりました。
以上のことから、現時点では、NHK受信料の支払いを拒否していても、裁判の判決によって強制的に契約させられ、受信料はテレビを設置してからの期間分を全て支払わなければないことになります。
NHKはなぜスクランブルを導入しないのか
NHK受信料が話題になるたびに言われるのが、NHKのスクランブル放送化です。
スクランブル放送とは、テレビ放送用のデータを一定の規則に基づき暗号化することで、受信者側で暗号鍵を用いないと視聴も録画もできなくなるものです。
WOWOWやスカパーなどの有料放送は、スクランブルを導入しているため、アンテナを設置しても契約しないと視聴できません。NHKの衛生放送でも契約しないと画面内に契約に関する案内が表示されていると思います。
現在の地上波テレビはB-CASで管理されているので、NHKがスクランブルを導入すれば、簡単に契約世帯以外に視聴させないことができるはずです。しかし、NHKはスクルランブルを導入する気はありません。
なぜ、スクランブルを導入しないのか
NHKは、広く視聴者に負担していただく受信料を財源とする公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、いつでも、どこでも、誰にでも分けへだてなく提供する役割を担っています。
スクランブルをかけ、受信料を支払わない方に放送番組を視聴できないようにするという方法は一見合理的に見えますが、NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます。
スクランブルをかけて受信できない世帯が出てしまうと、緊急災害時に困る人が出てきたり、特定の人しか見なくなることでNHKが担っている公共放送としての役割が果たせなくなるということですね。
これについては確かに一定の理解はできる気がします。NHKは民間のテレビ局とは求められるものが違いますし、契約者に利益のある番組ばかりになると公共放送ではなくなります。
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この記事の著者(専門家)
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株式会社アルビノ代表取締役。ファイナンシャルプランナー。埼玉県飯能市出身、1978年12月25日生。趣味は登山。Webライター歴23年。カードローン利用歴16年。現在は消費者金融3社、銀行カードローン3社の契約あり。
個人で自動車ローンや住宅ローンを利用したことがあり、起業してからは法人で銀行融資や日本政策金融公庫の一般貸付、マル経融資で借りた経験があります。
FP技能士、宅地建物取引士、日商簿記検定、証券外務員の資格を保有。
運営者情報
会社名 | 株式会社アルビノ |
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代表者 | 竹内潤平 |
住所 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-3-13 西新宿水間ビル6階 |
電話番号 | 03-6914-6178 ※電話対応はしていません。 |
お問合せ | メールフォーム |
設立 | 2014年10月20日 |
資本金 | 1000万円 |
事業内容 | Webマーケティング支援 ライフプラン・コンサルティング メディア運営 |
主要取引銀行 | 三菱UFJ銀行 住信SBIネット銀行 |
法人番号 | 7011101071501 |
本社所在地 | 〒176-0012 東京都練馬区豊玉北4-4-5 |
インボイス登録番号 | T7011101071501 |